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再開発で得するのは誰?

再開発で利益を得るのは、デベロッパー(大手不動産会社)やゼネコン(大手建設会社)などの、地元とは無関係な大企業です。​そのしくみをご説明します。

●地権者が損をする「権利変換」

地権者が損をする➀「権利変換」

​立石の再開発は、正確には「第一種市街地再開発事業」と呼ばれるものです。

その特徴は、「権利変換方式」と呼ばれるシステムです。

事業を行うのは再開発地域に土地や建物を持つ人(地権者)でつくる再開発組合です。

再開発組合は、金融機関などからの融資や、国や自治体の補助金を使って、再開発地域に高層ビルを建てます。地権者は、もともと持っていた土地や建物の資産額分の、ビルの床(権利床)を受け取ります。これが「権利変換」です。

再開発組合は、権利床以外のビル床(保留床)を売却して、借りていた資金を返します。

​これが第一種市街地再開発事業の、基本的な構図です。

権利変換方式の大きな問題の一つは、地権者が損をするということです。

元々の資産と「同じ金額分」のビル床をもらえるわけですが、真新しいビル床は坪単価も高いため、一般的に元々の土地に比べて4割前後も目減りしてしまいます。このため、零細地権者がマンションの部屋を得るには自己資金の持ち出しが必要になる場合も多々あります。

自分の土地でお店を営んでいた人も、再び同じ店舗面積を確保するためにはかなりの持ち出しが必要です。

また、土地と異なり、ビル床は時間とともに減価償却していき、いずれはゼロ価値になってしまいます。

こうした理由から、どこの再開発でも地権者のかなりの割合が、地区外への転出を選びます。権利床を現金換算した金額を、補償金としてもらうことになります。同じ葛飾区内で最近行われた再開発事業では、転出者の割合は約半数に上りました。

元居た住民が出て行って、、その土地に縁もゆかりもない富裕層がタワーマンションに入ってくる。

再開発は、しばしば「血の入れ替え」とも称されます。

権利変換模式図.png

権利変換のイメージ

​●暮らしていけない再開発ビル

地権者が損をする②「再開発後」

加えて再開発ビルでは、今まで存在しなかった維持・管理費や修繕積立金が、月々数万円という単位でかかってきて、家計や店の経営を圧迫します。

入居率が低ければ、大規模修繕の時に積立金が足りず、さらに一時金まで要求される場合もあります。

こうしたコストは建物の経年劣化が進むごとに、より高額になっていきます。

​また、管理組合が機能せず、満足な修繕が行われないままビルが放置されて、いずれ廃墟化していくという心配もあります。

地権者が損をする③それでも再開発に乗る理由

​●なぜ地権者は再開発に乗るのか?

再開発を行うには、地権者の2/3以上の同意を得て、再開発組合を立ち上げなければなりません。

立石駅北口地区の場合、発起人となったのは立石に住まずに建物を貸している数名の大地主たちでした。

彼らは、老朽化した物件を自己資金なしで建て替え、より高い家賃で貸せるようにするため、再開発を望んだのです。

一方、立石を終の棲家と考えていた大半の地権者は、当初反対しました。

しかし、再開発の正確なリスクをひた隠しにする行政・デベロッパーの説得工作により、少しずつ容認派が増えていきました。また、高架化工事の用地を再開発と切り離すことで同意要件をなくして強制収容を可能にし、半強制的に買収した後で再び区の土地として再開発エリアに編入するという、強引極まりない「裏技」によって、駅・線路沿いに住んでいた多くの反対派地権者が「排除」されました。

加えて、いくら強硬に反対しても、行政や企業は年を取らず、再開発計画は覆りません。一方で地権者は徐々に高齢化が進み、親族の意向などで土地を手放す方も増えてきたのです。

こうして、同意者数がぎりぎり2/3に届いた瞬間に、推進派地権者とデベロッパーでつくる準備組合は事業認可を申請し、再開発組合を立ち上げました。そうなると、最後まで反対していた残り1/3の地権者も組合に強制加入させられ、事業の遂行に責任を負う立場へと、追いやられてしまうのです。

​●地権者に責任を押し付ける「行政」

責任逃れの「行政」

立石駅北口地区の再開発の総事業費は、約932億円です。このうち民間への保留床売却でまかなうのは284億円分。残りの648億円は、国・東京都・葛飾区からの補助金等でまかなわれます。

立石駅周辺の再開発全体で見ても、総事業費2000億円余り(推定)のうち、1000億円以上が税金によってまかなわれる見込みです。

こうしてみると再開発は立派な「公共事業」であると言えますよね。そもそもこの再開発は葛飾区が住民に呼びかけてスタートさせ、一貫して区の主導により進められきたものです。

それでも区は、「あくまで主体は権利者(による再開発準備組合)」だと言い張ります。

例えば再開発ビルによるビル風や日影の影響について区に質問状を出しても、「...と聞いております」「準備組合が適切に対応していくものと考えております」などと責任逃れの文言を連発。

 

この分では、今後再開発が失敗に終わったり、再開発組合が破綻したりした場合にも、権利者に責任が押し付けられることになるでしょう。

​●自分の懐は痛まない「デベロッパー」

美味しいとこどり「デベロッパー」

さて、保留床の売却を一手に引き受けるのが、『デベロッパー』と呼ばれる大手不動産会社です。

普通、不動産会社がマンションを売りたいと思ったら、まずは自分で用地を確保し、そこに建設会社にお金を払ってマンションを建ててもらう必要があります。

ところが再開発では、土地は地権者が供出してくれる。お金も、4割~多ければ7割ほど国や自治体が出してくれる。

様々な責任も、地権者らでつくる再開発組合が負ってくれる。

自分たちは、ヒトの土地にヒトの金で建てたマンションを右から左に流すだけで、莫大な利益を得られるのです。

​こんなにおいしい話はそうはありません。

​●「建てたら終わり」のゼネコン

建てたら終わりの「ゼネコン」

再開発で莫大な利益を得られるのは、大手建設会社(ゼネコン)も同じです。

多くの場合再開発が事業化される前、つまり準備組合の段階で、工事を担うゼネコンまで決定します。立石駅南口東地区の場合もそうでした。

当時、清水建設は談合疑惑により公共工事の指名停止処分を喰らっている最中でしたが、(区からどんなに補助金をもらっていようが)「民間事業」である再開発なら、まして法律上の身分を持たない準備組合なら問題ありません。清水建設はゼネコンに内定しました。

ゼネコンは建てるまでが仕事。デベロッパーはマンションを売るまでが仕事。その後の住民の生活がどうなろうと、知ったことではありません。

「住民のため、街のため」と言って再開発に協力していても、本心は「楽して儲かりたい」それだけなのです。

立石周辺再開発の協力企業一覧

・再開発企業一覧
再開発企業一覧2022.png
住民不在の再開発

​●住民不在の再開発

「なんだかんだ言って、結局は住民が再開発を望んでるんでしょう?」と思うかもしれません。

しかしそれは誤りです。

 

​再開発組合や、その前段である「再開発準備組合」は、地権者による組織というのは建前にすぎません。。

「事務局」として実際の業務を担っているのは、デベロッパーやコンサルタント、ゼネコンから出向してきた社員たちです。理事として名を連ねる地権者たちはいわば「お飾り」です。

事実、立石駅南口東地区の準備組合では、組合内部での不正を疑った地権者の理事が事務局に対し資料の公開を求めたところ、拒否されました。理事の職務を遂行するために、本来必要なはずの資料を見ることができなかったのです。

準備組合は都市計画決定後、地権者らに「組合設立同意書」の提出を要求します。​この同意率が、土地所有者・借地権者・宅地面積それぞれにおいて総数の2/3を超えると、再開発組合(=本組合)設立・事業認可となります。

こうなると後戻りは困難です。本組合設立後30日以内に、全ての地権者は転出か権利変換かを選ばなければなりません。転出する地権者以外は全員、本組合に強制加入。着工へ向けて突き進むことになります。

本組合が立ち上がってからでは後戻りできない、なのに、準備組合の段階では「任意団体」なので計画は勝手に作れてしまう。情報公開の義務もなければ、地権者に約束したことを守る義務もないのです。

もう一つ問題点があります。それは借地権者や、再開発ビルで大きく住環境を変えられることになる周辺住民らに、一切口出しする権限がないことです。

特に立石においては、有名店や老舗を含め、街のアイデンティティーを担ってきた多くのお店が、テナントとして営業しています。彼らが街づくりに口を差しはさめないというのは、あまりにも冷たいのではないでしょうか。

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