決起宣言(7.26区役所駅前移転を止める決起集会)
今日はいちおう決起集会ということで、最後にちょっと宣言みたいなものをして、盛り上がって終わりたいなと思っていたのですけど、
なかなかほんとに、先ほどから色んな方のお話を聞いていて、それぞれ再開発・区庁舎問題に対する捉え方というか、同じ反対している人の中でも色んなスタンスがあると思うので、それを一つにまとめるということはとても難しいことだと思います。
という中で私が、私個人として、なんで今こういう活動をやっているのかという、そこの部分を少し、お話しさせていただければなと思いますので、時間は押しちゃっているんですけど、もしお時間の許す方がいれば、聴いていただければと思います。
私は、今こんな代表なんていうエラそうな肩書がついてるんですけど、実のところ、立石の、とある米屋の見習い店員という仕事をしています。
やっていることとしては、米を担いだりとか精米したり、お客さんとおしゃべりしたり、バイクで色んな、立石だったり区内だったりを配達して回ったりとか。
で、昼休みになれば私がお客さんになって、近所の色んな安くておいしい町中華とか、立石にはたくさんあるので、そういうお店、食堂とか、そういう所で時間を潰します。
仕事のない日は商店街で買い物がてら、お店の人と立ち話をしたり、友達と飲み歩いたり。
そんな日々を送っているんですね。
そんなところに、先ほどから区庁舎の建替えにかかる費用が 700 億円という話をさせていただいているんですけども、正直、700 億という数字はケタが大きすぎて、こんな生活をしている自分にとっては、とてもピンときません。
これだけ皆さんに税金のムダ遣いだっていうお話をしている中であれなんですけど、
やっぱりこういう話、スケールが大きい話って、なかなか現実感がわかない。
現実感がないものに対して、心の底から怒るということも、私にはなかなかできません。
しかし、今、私はとても怒っています。
それは、いつも歩く路地裏であったり、いつも入るお店、家の窓から見える風景、私も立石のすぐ駅前に住んでいるんですけども、そういう風景であったり、私自身がそこに仲間に入れてもらっているような、いくつかの小さなコミュニティーだったり。
そういうほんとに具体的でかけがえのないものたちが、その 700 億円によって、いま現実に壊され、奪われようとしていることに、とても、とても怒っています。
この立石の街を壊して金儲けしようとしている人たちに対し、心の底から怒っています。
私にとって、立石の街はとてもかけがえのないものです。
それは、きっと高円寺の人にとっては高円寺が、三鷹の人にとっては三鷹の街が同じように、もちろん大山の人にとっては大山の街が同じように、かけがえのないものなのだと思います。
その、かけがえのなさを創り出しているものは、この立石の町が今まで積み重ねてきた時間、それに私がこの街の中で積み重ねてきた時間。そして、今、この町の中で互いに関わりあいながら生きている、人やお店、路地、建物、光、音、臭い、空気、そういったものの全てです。
そのかけがえのなさを壊すものが、再開発です。
再開発は、街の時間と文脈を断ち切ります。再開発は、街の根っこを断ち切ってしまいます。
ここにしか流れない時間、ここにしかない空間というものを破壊します。
美しいものとは、かけがえのないもののことなんじゃないかと思います。
強いものとは、持続するものだと思っています。持続するものとは、風土に深く根を張っているもののことだと思います。
再開発でできるタワーマンションや区庁舎は、どんなにきれいでも、美しくありません。
再開発でできる街は、どんなに頑丈でも、強くはありません。
今、「にぎわいの創出」とか「利便性の向上」とか「安心・安全な街づくり」、
そういう立派な言葉、綺麗な言葉たちが、再開発や巨大な新庁舎、そこにつぎ込まれるたくさんの私たちのお金を、正当化しようとしています。
でも、これは先ほどから色んなお声をいただいているところに対する多少の回答になればいいのかなと思うんですけど、私たちは、やっぱり問い直さなければならないと思います。
時間と空間が一部のすきまもなくビジネスによって搾取される「にぎわい」が欲しいのか、
時間や空間のすきまに豊かさや生きている実感を感じられる「にぎわい」がほしいのか。
誰とも関わらずに行きてゆけるような「利便性」が欲しいのか、
何かしたいとき、困ったとき、助けてくれる人がそこにいるような「利便性」が欲しいのか。
無機質なコンクリートに囲まれた「安心・安全」が欲しいのか、
人と人との信頼関係の中にある「安心・安全」が欲しいのか。
もちろん、答えはゼロか百かではありません。
むしろゼロ・百の選択を押し付けてくるのが、再開発です。
今、葛飾区は区庁舎移転という手段を通して、そういう選択を私たちのまちに押しつけてきています。
今、私は、選択を迫られています。
それは、彼ら、行政やデベロッパーが言うように、再開発してきれいで安全な街にするのか、
このままの古くて危険な立石に住み続けるのか…
などと言う選択ではもちろんなく、
全てを壊して高層ビルを建てることありきの再開発に乗るのか、それとも未来へ継承するべき価値が何かをみんなでよく考え、それを守り遺すために知恵とお金を使うのか…
とも、またちょっと違って、
結局、このまま私たちの生きてきた街が壊されるのを「何もせずに眺めている」のか、未来へ継承するべき価値を、みんなで考えていくその土台を守るために「今、ここで戦う」のか。
私は、戦うことを選びます。
再開発を止めた先の未来。それはすでに見えつつあります。
先ほどからたくさんお話しいただいているように、高円寺や西荻窪、それに今日ちょっと来ていただけなかったんですけど、谷根千であったり、京島であったり、その他にも有名じゃないところでも、多くの地域で、自分たちの大切にしてきた有形無形の価値を守り・遺しつつ、新たな自治の形を生み出している人々がいます。
そして、再開発を止めるための戦い、そこにも、今、確実に風が吹いています。
今日これだけ、他の地域からたくさんの人がここに来てくれた。そしてそれ以外でも、これだけこちらの予想を超えて、多くの人が集まってくれたということ、それ自体が何よりの証拠ですし、ほんとに少し前までこんな光景はあり得ませんでした。
今年の 5 月に高円寺で、10 か所近い再開発地域の人たちが集まって、一堂に会してパレードや街頭宣伝をやりました。
その高円寺を擁する杉並区では、区長選挙で、そのパレードにも参加していた岸本さと子さんが初当選しました。
葛飾区でも、先ほど申しあげたとおり、昨年区議選と区長選に負けてしまって、再開発を止めることは無理なのかなって絶望しかけていたのですけど、そこから、今日もたくさん区議さんがいらっしゃっていますが、今、区議会の中に私たちの声が少しずつ届き始め、そして実際に議案提出が延期になったり、風向きが変わってきました。
一方の青木区長は、補助金問題、自分の蒔いた種で与党からも野党からも無所属の議員からも突き上げられて、右往左往しています。
ですから、本当に、葛飾区を変えるのは今です。
ここから、区庁舎移転の条例案が出されることになっている 12 月までの 5 か月間、私は全力で戦います。
街づくりと言いながら、ここにある街、ここに今生きている人々の暮らしの価値を、全く理解しない葛飾区政を変えるために。
そして、私を生かしてくれているこの立石の町に対する、私なりの応答として、精一杯、この再開発を止めるために戦おうと思っています。
本当に個人的なことで恐縮なんですけども、でも、もしここに今来てくださっている皆さんの中のひとりでも、二人でも、一緒に戦っていただけたら、本当に嬉しく思います。
ということで、あまり締まらないですけど、この集会の代表宣言に代えさせていただけたらと思います。
本当に、本日はありがとうございました。
2022.7.26
葛飾区庁舎建替え問題を考える区民有志 代表 塔嶌麦太